Lは、守らなければならないほど弱い存在じゃない。
それを月はよく知っていた。

彼は強い。
その強さはただ揺ぎ無い意思ゆえのものだ。
何者にも自分の思いを譲らない、頑固とか強情とか言われる類の意思。
それが彼を強くしていた。

キラを捕まえるという、鋼の意思。

(だけど)

ただ、キラを貪欲に追い求めるLを月は盗み見る。
捜査本部のモニターとあいかわらずの座り方で向き合う彼は、やはり周りを寄せ付けない強さを纏っている。

(だけど・・・それでは、駄目だ。)

月は強く、その強さを否定する。

それは脆さと諸刃の強さだ。
彼がもしキラを捕まえたらその強さはどうなるだろう、と不安になる。
そして、その答えは月の中でもう出ていた。

きっと、Lは強さを失う。

(そんなの、もうLじゃない)

今まで数々の難解な事件を解いてきただろう彼。
けれど、この事件はそんな中でもLの中で特別だ。
彼が今までこんなに梃子摺り、こんなに執着した事件はきっとないに違いない。

この事件の為に強くなったLは、事件が解けた瞬間に消える。
そんな未来が月の目の前にちらつく。

(駄目だ、駄目だ、駄目だ!)

キラを捕まえた瞬間、失われるだろうLを想い。
月は苦しく首を横に振る。
そんなのは耐えられない。

自分が知るLはその強さを含めてのLだ。
何かが欠けた彼など、見たくないし、赦せないだろう。

(捕まるな、キラ)

そして裏切りと知りつつ、月はそんな事を思った。
Lの鋼の意思を守りたいが為に。