変化は誰に訪れたのだろう。

急にLが優しくなった気がして、月はその変化に戸惑っていた。
月の知る今までのLは、何を考えているかわからず、飄々としていて。
そのくせ真実を見極める目だけは持っている人物で。

そこまで考えて月は緩く自分の考えを否定する。

そうだ、そう考えればLは何も変わっていないのかも知れない。
今も飄々として自分の前に座り、真実を見極めるべく画面を凝視し。

「どうかしましたか?」

読めない表情で、月を見る。

「いいや、何でもないよ」

ジッと窺うようにみてくるLに、月は笑みを浮かべ首を緩く横に振る事で答える。
自分の考えている事は他愛なく根拠も無いことで。
単に思い過ごしかもしれなくて。

そんなことでLの邪魔をしたくないと思う。

「そうですか」

納得したわけでもないだろうに、Lは微かな笑みを浮かべてそう答え、画面へ視線を戻す。
そこに垣間見えるのは余裕。
少し前だったらきっとこんなにあっさり引きはしなかったのに。

(やっぱり、変わってしまった?)

それが少し寂しく思う。
前のLが恋しくなる。

・・・恋しく?

(何を考えているんだ、僕は)

自分自身の中でふと浮かんだ『恋しく』という言葉に月は反応し、赤くなる。
Lを好きだとは自覚していた。

だから彼に抱かれる。
かれを拒絶しない。

けれどそれを恋、と呼ぶには抵抗があった。

そう呼ぶには、この関係は不毛すぎる。

「どうかしましたか?」

ふと表情を曇らせた月を見逃さず、Lは先ほどと同じ問いをした。
その問いに、月はゆるく首を振る。

きっと、恋する前ならば。
抱かれる前ならば。
なんでもないとあっさり嘘をつけたのに。

「なんでもないよ」

それに先ほどと同じ答えを返しながら。
月はLに嘘をつくことを苦しく思っていた。
そして、自分にも確かに訪れている変化に、胸中でそっと溜息をついた。