孤高でなくてはいけない。
そう、感情など捨て、全てに平等であらなければ。

その為にはキラは孤高でなくてはならない。

そう、わかっていたはずなのに。

「随分難しい顔をしてますね」

ぼんやりと画面を見て、キラを追っているふりをしている月にLが声をかける。
同時にぬっとすぐ目の前にLの顔が現れて、月は思わず顔をしかめた。

「別に、そうでもないよ」

それからすぐにそれを取り繕って微笑を浮かべ、月はLを見る。
そして、間近に彼の顔があるのをいいことに、こっそりとLを観察した。

程よく整った顔立ちと、それを隠すように濃く現れた隈。
ぼんやりとして感情を隠し、そのくせ真実を見抜く鋭さをもつ瞳。
甘いものを全て飲み込む唇。
黒い闇のような髪。

(どうして)

月は一瞬目を瞑り、Lのその姿全てを見ないようにする。
そしてその一瞬で考える。
どうして、と。

―――どうして自分は間違ってしまったのだろう。

「月君?」

名前を呼ばれることが心地いい。
月が瞳をあけると、Lが心配そうに見ていた。
それが演義であれ嬉しく思う自分が居るのだ。

(僕は、負けるのかもしれない)

そして、いつもそんな自覚をするたびに月は思う。
自分は、キラは、Lに負けるかもしれない、と。
月はLを想うがために孤高でも平等でもなくなってしまった。
だから、きっと負けるのだ。

(でも、それも悪くない)

キラである限り、月はLの命を狙い続けなければいけないだろう。
キラかLか。
そのどちらかが死ぬまで、Lとキラの戦いは続く。
彼らは争いあわなければならない。

(そう、だから)

早く終わらせて欲しいと思う。
キラが負ける形でいい。
もう、月にはLの命を奪う事なんて出来ないから。
奪おうと思うことさえ苦痛だから。

(僕の負けで、いい)

「どうしました?」
「なんでもないよ」

一瞬、月は泣きそうな顔になる。
それをますます心配そうにLが覗き込んできた。
その顔が辛くて、その表情を消したくて月は無理に微笑み、誤魔化す。

(間違ってしまった僕は、死を持って償わなければ)

それでもいつかくる、Lが自分を裁くその日までは。
このままの幸せな日々を過ごしたいと、月は思った。