その言葉を聞いた瞬間、ドキリとなった胸を隠すので必死だった。

真摯な表情でLが自分を見ていた。
その視線は怖いほど本気を湛えていて。
Lが僕を逃すつもりは無いのだと告げているように思えた。

「私と一緒に捜査をしてください」

一瞬ドキリと胸がなる。

その言葉の真実の意味は、きっと僕の監視だ。
捜査本部と言う籠の中へ僕を閉じ込め、監視する罠だ。
分かっているのに、悩んでしまう。
彼の視線があまりに強く自分を捉え、彼の言葉の端々に真摯な響きがあったからかもしれない。

彼がまるで僕を望んでいるのではないかと錯覚してしまう。

けれど、それは違う、と冷静なもう一人の僕が告げる。
僕自身を嘲笑いながら。

もっとももう一人の僕が囁かなかったからといって、そんな真実を見抜けないほど僕は馬鹿ではない。
ただ、見抜きたくない真実というのもあるのだ。

「僕の力が必要かい?それとも、監視したい?」

答えは決まっていた。
僕自身がLに近付き、その名前を手に入れるためには、Lの誘いに乗るのが一番だ。

分かっているのに頷けない。
だから僕は会話を繋ごうと問い返した。

真実を突きつけられることに恐怖して、はぐらかそうとしてちゃかしたように告げる自分を止められないままに。

Lもちゃかして返してくれることを期待しながら。
あるいは、僕が必要だと嘘でもいいから言って欲しくて。

「そのどちらもです」

Lのその答えは実は半分予想していた。

普通なら、嘯いて僕の力が欲しいと言うだろう。
あるいは僕が望むとおりにちゃかして、答えをはぐらかすだろう。

もし、Lが馬鹿か正直者だったら、おそらく監視したいと本音を言うだろう。
監視して、証拠を掴もうとしているのだと、真実を明かすだろう。

けれど彼は普通でなく。
ついでに馬鹿でも正直者でもない。

だから、どちらもという曖昧で残酷な表現を使う。

「どうして、笑うんですか」

僕は無意識に笑っていたらしい。
Lが怪訝そうにこちらを見ている。
僕のその反応はLにとって予想外だったのだろう。
ただ不思議そうに僕を見るLに微かに心が晴れる。

「君は、案外正直だなと思って」

だから、僕は答えを自分の中で探してその理由の半分をLに渡す。
辿り付いたもう一つの答えを隠す為の、真実の漏洩。
嘘をつくときは真実に交えるのが一番だ。

「そうそう、さっきの答えだけど、L?いいよ、君と捜査をしよう」

それから誤魔化すために、最初の問いの答えをLに告げた。
その瞬間、もう一度胸の鼓動は高く鳴った