たった一つ願いが叶うと言うのなら、何を願うだろう。

そっと隣で眠る青年の寝顔を窺いながら月は思う。
あぁ、彼も眠るんだなどと思いながら月はそっとベッドから降りた。
シャラリと繋ぐ鎖が鳴る。
空気に素肌がさらされ、微かな寒気を覚える。
それを気にせず、ベッドから少し離れ、月はLを観察する。

眠るといつもより少し幼く映る顔立ち。
実は以外に筋肉のついた胸、腕。
思ったよりも温かい体温。

Lは起きる気配も無い。
それに安堵しながら、月は考えを進める。

たった一つ、願いが叶うのならば、自分は今、何を願うだろう。

デスノートを拾いたての頃ならば、きっとすぐに答えることが出来た。
優しい人だけの世界が欲しい。
その世界の神になりたい。

Lと出会いたての頃ならば、断言できた。
Lを殺して欲しい。
自らの邪魔者を消し去って欲しい。

けれど、今は?

そこまで考えて、出た答えに月は顔を歪める。
それから馬鹿馬鹿しい、と月は自分を一笑した。

馬鹿なことだ。
この世界に死神はいても、神はいない。
いたとしたらなんと無情な神なのだろう。
そんな神に何を祈ろうと、叶わないに違いない。

そう、だから自分は自分の力でそれを手にするのだ。
自分の力でLを殺すのだ。

(もう、僕は望むことさえ赦されない)

この手は赤く染まっていて、決してそれは洗い流されることが無いのだから。