やる気のない彼に月は溜息を禁じえなかった。
彼と言うのは他でもない、Lこと竜崎のことだ。
元々何を考えているか読めない人物ではあるが、月は最近彼のことが分かってきた。
今、彼は画面を目の前にしてぼーっとしている。
何も考えていないのが手に取るように分かるようになったのは、喜ぶべきか悲しむべきか。
もう一度溜息をつくと、竜崎が今気付いたというように視線を向けてきた。
「どうしました、月君」
「どうしましたじゃないだろう・・・・・・」
眉間に皺を寄せた月に、そんな顔をするとかわいい顔が台無しですよ、と竜崎が小さく呟く。
そのセリフに月の顔に皺どころかピシリと青筋が浮かぶ。
「こんな顔をさせているのは誰だと思ってるんだ!」
「さぁ・・・・・・私が思うに、松田さん、ですか?」
「お前だ、竜崎!」
殴ってしまいそうになるのを堪えながら言うと、私ですか〜、と間延びして竜崎が返してきた。
その返答に脱力して、月はらしくもなく机に身を任せる。
「月君?」
「もういい。竜崎がそういう気では、僕もやる気が出ない」
普段真面目で、役割を放棄することなどしない月のその態度に、竜崎は元々真丸な目をさらに丸くする。
さすがの竜崎も焦ってやる気を出すかもしれない、と少し期待してそんな態度をとった月だったが。
・・・・・・彼の予想に反して、竜崎は笑った。
穏やかに、優しく。
なんだ、そうしていれば普通に見えるじゃないかと月が思わず思ってしまうほど大人な笑み。
「しょうがないですね、月君は」
そしてその笑みのまま子供にされるように頭を撫でられる。
その心地よさに身を任せようとして、月は気付いた。
「しょうがないのは竜崎の方だろ」
「・・・・・・そういえば、そうでしたね。でも燃料が切れてしまったので」
「ねん、りょう?・・・・・・甘いものか?」
言い訳のように言った竜崎に思わず首を傾げて月は尋ね返す。
そんな月に、竜崎は真面目な顔で月を覗き込んだ。
「いえ、月君切れです」
「な・・・・・・なッ!」
そしてそのまま竜崎は真面目な顔で月から口付けを掠め取っていく。
「はい、燃料補給完了。やる気でました」
「仕事をしろ!!」
「はいはい」
相変わらずやる気なさそうに竜崎は返し、赤面した月に背中を向けて再び画面に向かう。
今度は、先ほどとは違い真面目に食い入るように見ている竜崎にそれ以上何もいえなくて。
小さくクッと悔しげに唇を噛んで、月も仕事へと戻った。
竜崎の顔が微かに綻んでいたことは、月からは見えなかった・・・・・・。
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