偶には息抜きも必要で。
そんな訳で今、月は紅茶を飲んでいた。
出された紅茶はとてもいい香りがして、少し安らぐ。

もっとも、目の前に無表情で甘いものを食べ続ける相手が居なければ、きっと月はもっとリラックスできたのだろうが。

よくそれだけ甘いものを食べれるな、と月はこっそりとLを見。
その小さな視線にLは顔を上げる。
そして首を傾げた。

「私の顔に何かついてますか?」

その質問に月は緩く首を振った。
事実、Lの顔にケーキのクリームはついていない。

「いや、ただ」
「ただ?」
「甘いものが好きなんだな、と思って」

今さら何を言うのだ、という目でLが月を見る。
その視線はきっともっともだろう。
Lが甘いもの好きなことは捜査本部の誰もが知っているのだから。
けれど、実際月は改めてふとそんな事を思い、思いは口から零れてしまったのだ。

「昔から好きなの?」

間を繋ぐように質問してから月はしまったと思う。
もしかしてこれも過去を探ろうとしてキラっぽいなどとLなら思いかねない。

「そうですね」

相変わらず読めない無表情のまま、ポツリとLが洩らす。
その声に、少し苦いものが混じっているような気がして、月はLを凝視する。
Lの表情から、何か少しでも読み取ろうとして。
けれど、結局月は彼から変化を読み取ることは出来なかった。

「竜崎は、どんな子供だったの?」
「どんなと言われても、普通ですよ?」

もう、Lのその声に苦さは感じられない。
ただ、首を傾げどうしてですか、と月は問い返される。

「いや、まったく想像がつかないからさ」

質問は思わずしてしまったもので、どうしてと言われても月にさえ理由は分からなかった。
だから、誤魔化すように理由を作って笑った。

そうして穏やかに午後は過ぎていった。