眠るその幼さは、思わず守らなければと想ってしまうほどだった。

Lは眠る月のその安らかな寝顔を冷たく見下ろす。
手錠をして、ともに寝起きするようになって。
負けず嫌いの彼は、いつもLより長く起きようと足掻いた。

足掻いて、足掻いて、必死に寝まいとして。
それでも、やがてこうして寝顔をさらす。
月はいくらその頭が冴えていようと常人で、ほとんど眠らずのLとは違うのだ。

くすり、と小さく月に見せた事の無い笑顔でLは笑って、その顔にかかる髪をのける。
すると、無防備で安心しきった寝顔が露になる。
いつもより幼く見えるその寝顔は、とても綺麗で。

Lは思わず見蕩れてしまう。
そして同時に、この眠りを誰にも奪わせたくないと思う。

思って、自分を哂った。

何を思っているのだろう、自分は?
彼はおそらくキラで。
自分は彼を追い詰める者なのだ。
追い詰めて、その眠りさえもべき奪う者なのだ。

ツキリ、と小さく胸が痛くなる。

今までどんなに非道なことをしても後ろめたささえを感じなかった氷の心が、だ。

痛んで、Lは胸を押さえる。

トクトクと確かに鼓動を立てる心臓。
特に不整脈を打っていたりはしない。

これは、この感情はなんだろう?
この痛みはなんだろう?

答えは手を延ばせば届く場所にあった。
それを知りながら、Lは知らないふりをする。

気付けば、キラを追い詰める事が出来なくなるだろうと漠然と気付いていた。

それでも。

いっそ気付いてしまって。
そして月がキラである証も手に入れて。

それを元に彼を捕えてしまおうかとも思う。

そうすればもう胸は痛まないだろう。

あるいは。

真実を手にして、それを胸の中に秘めてしまえばいい。
そうして、月からキラを奪うのだ。

(いい考え、かもしれませんね)

出来ない、と分かっていているそんなことまで思う。
キラは悪だ。
その悪を自分は決して許さないだろう。
そう分かってはいるのに・・・・・・・自分は本当にどうしてしまったのだろう?

「これが恋、ですか」

気付かなかったふりをした感情の答えを口にのせて。
Lは苦笑した。
愛しさが胸から溢れてしょうがなかった。
月を守りたいと、その眠りが安らかであれと心が叫ぶ。

そう、それでも。

自分は真実を手にしなければならない。
それが自分の存在意義なのだから。