好きだと伝える気など月にはなかった。
けれど、気付けば声に出してしまっていたのだ。

「好きなんだ」

告げた声は、どこか他人事のように月には思えた。
遠くで、自分でない誰かがそう告げているような違和感。
あるいは、夢の中でそう告げたような。

けれど、それが夢ではなく、自分が声に出したのだと言うのは次の瞬間、嫌と言うほどわかった。
Lの反応によって。

いつも何を考えているか分からない目が、鋭く眇められる。
ジッと月を凝視して、なにかを測るように、探るように覗き込む。
そして、いつもの飄々とした雰囲気が消え、ただ、触れる事も出来ない刃の様な気配が彼の周りに現れる。

「幻滅しました」

ぽつり、とLの呟いた言葉のなんと冷たいことだろう。
その瞬間、胸が痛くなる。
そしてその痛みで月はそれほどLが好きなのだと自覚する。

自覚して、哂った。

「だろうね」

Lの声よりなお小さく。
ただ、独り言のように月は呟く。
Lの答えはもっともだろうと思えた。

Lは月をキラと疑っていて、事実月はキラだ。
Lにとってキラは最大の敵であり、ライバルだろう。
そんなライバルから好きだと告げられても、ただ、Lのように嫌悪するだけだろう。

月は自分自身を哂う。
その哂いは、暗く、冷たく、それでいて今にも泣き顔に代わってしまいそうな儚さで。
傷付いた事を隠すように。

そんな月の表情にLがその黒い瞳を見開いた。

Lとしてはてっきり、キラの罠だと思っていたのだ。
そう、近づく為の甘い罠。
だから、月のその反応は驚くに値するもので。
隠す事も出来ずにそれは表情に表れる。

「月、君?」
「忘れてくれ」

次の瞬間月は苦い笑みを消して、無表情に戻る。
そして、Lに背中を向ける。
その背中は全てを拒絶していて。
Lは思わず延ばしかけていた手を、諦めるように下ろした・・・・・・。