例えば、これは運命なのかもしれない。

そっと、月はその黒髪を手で梳いた。
髪はさらりと月の手を逃れていく。
それが悔しくて、月はLの髪をもう一度梳いた。
また逃れていく髪。
更にもう一度月はLの髪を梳こうと彼の頭に手を延ばし。
それでも微動だにしない彼に月は顔をしかめる。

彼は本当に生きているのだろうか?

その呼吸を顔の上へと手をかざす事で確かめる。
そして知る。
あぁ、確かに彼は生きているのだと。

確認して安堵するのだ。

・・・・・・よかった、誰も彼を殺していない、と。

一体、何度それを繰り返しただろう。
何度不安に思っただろう。

何度、恐怖に思っただろう。

誰かが彼を奪ったのではないかと。

眠るLは彫像のようだ。
元々薄い生気がまったく消えて無機物のようになる。
あるいは、死体のようになる。

その度に月は怯えるのだ。

誰かが彼を殺したのではないかと。

(そんな事、許さない)

許せはしないのだ。
彼の命を奪うのは自分なのだから。
その為に自分達は出会ったのだ。

(だから)

誰にも殺されるな、と月は胸中で呟く。
彼の全てを奪うのは自分でなくてはならない。

それが運命なのだから。